スコットランドの通貨とお金のガイド

スコットランドを旅行するとき、多くの方が最初に確認するのが「どの通貨を使うのか」という点です。結論から言えば、スコットランドの通貨は英ポンド(GBP、£)です。ユーロは使えません。ただしスコットランドには独自のデザインの紙幣が流通しており、これがイングランドとの間で少しややこしい問題を生むことがあります。このページでは、通貨の基本から、カードと現金の使い分け、ATMの使い方、チップの習慣まで、実際に旅行中に必要になる情報をまとめています。

スコットランドの通貨は英ポンド(GBP)

スコットランドはイギリス(連合王国)の一部であり、通貨も英国全体と同じポンド・スターリングです。記号は £、通貨コードは GBP。1ポンドは100ペンス(pence、単数形は penny)に分かれます。

イギリスはEUに加盟していた時期もユーロを導入しなかったため、ユーロは基本的に使えません。一部の空港の免税店などでユーロを受け付ける場合もありますが、レートは有利とはいえず、釣り銭はポンドで返ってきます。スコットランド旅行のためにユーロを用意する必要はありません。

スコットランド独自の紙幣がある

ここがスコットランド最大の特徴です。イングランドではイングランド銀行が紙幣を発行しますが、スコットランドでは3つの商業銀行が独自の紙幣を発行しています

  • バンク・オブ・スコットランド(Bank of Scotland)
  • ロイヤル・バンク・オブ・スコットランド(Royal Bank of Scotland)
  • クライズデール銀行(Clydesdale Bank)

つまりスコットランド国内では、同じ「20ポンド札」でも3種類のまったく違うデザインの紙幣が同時に流通していることになります。さらにイングランド銀行券もそのまま通用するため、実質的に4種類のデザインが混在します。初めて訪れると戸惑いますが、価値はすべて同じです。

デザインにはスコットランドの人物や風景が描かれており、旅の記念として持ち帰る方も少なくありません。

「スコットランド紙幣はイングランドで使えない」は本当か

旅行者の間でよく話題になる点です。正確に説明すると、次のようになります。

まず「法定通貨(legal tender)」という言葉は、日常の買い物とはほとんど関係がありません。これは債務の弁済に関する狭い法律用語で、厳密にはスコットランド紙幣はイギリスのどこにおいても法定通貨ではありません。それどころか、イングランド銀行券もスコットランド国内では法定通貨ではないのです。

重要なのは、店舗には支払い方法を選ぶ権利があるという点です。法定通貨かどうかにかかわらず、店は特定の紙幣の受け取りを断ることができます。

実際のところ、スコットランド国内でスコットランド紙幣が断られることはまずありません。一方イングランドの小さな店舗では、見慣れないという理由で受け取りを渋られることが時々あります。ロンドンの大手チェーンなら問題ないことがほとんどですが、地方の個人商店では起こり得ます。

スコットランドからイングランドへ移動する予定があり、手元にスコットランド紙幣が多く残っている場合は、出発前に使い切るか、銀行で交換しておくと安心です。もっとも、カード払いが主流の現在では、実務上そこまで気にする必要はありません。

紙幣と硬貨の種類

流通している紙幣は £5、£10、£20、£50 が中心です。スコットランドの銀行はこれに加えて £100紙幣 も発行しており、これはイングランドには存在しない額面です。またロイヤル・バンク・オブ・スコットランドは、いまも珍しい £1紙幣 を発行しています(流通量はごくわずかで、見かけたら幸運です)。

近年の紙幣は紙ではなくポリマー(プラスチック)製に切り替わっており、水に濡れても傷みにくくなっています。古い紙製の紙幣は多くがすでに流通から外れているため、以前の旅行で残ったものが手元にある場合は、銀行で交換が必要になることがあります。

硬貨は 1p、2p、5p、10p、20p、50p、£1、£2 の8種類。£1硬貨は12角形の独特な形をしています。硬貨は英国共通で、スコットランド独自のものはありません。

現金とカード、どちらを使うべきか

現在のスコットランドはキャッシュレス化が非常に進んでいます。都市部では、旅行中にほとんど現金を使わずに過ごすことも十分可能です。

Visa と Mastercard はほぼどこでも使えます。American Express は大きなホテルやデパートでは使えますが、小規模な店舗やカフェでは断られることがあるため、メインカードにはしない方が無難です。

コンタクトレス決済(タッチ決済)が広く普及しており、少額の支払いでも当たり前に使われています。日本で発行されたタッチ決済対応のクレジットカードや、Apple Pay・Google Pay を設定したスマートフォンがあれば、そのまま使えます。バスや路面電車でもタッチ決済で乗車できる路線が増えています。

むしろ「カードのみ・現金お断り」の店も珍しくなくなりました。カフェやレストランで現金が使えないことがあるため、カードは必ず用意してください。

現金を用意しておきたい場面

とはいえ、現金がまったく不要というわけではありません。次のような場面では、少額の現金があると安心です。

  • ハイランド地方や島嶼部の小さな店 — 通信環境が不安定な地域では、カード端末が使えないことがあります
  • 「オネスティ・ボックス」 — 無人の直売所や小さな見どころで、料金を箱に入れる仕組み。田舎では今も現役です
  • 公衆トイレや駐車場 — 硬貨が必要な場合があります
  • 小規模なB&Bやゲストハウス — カード手数料を避けるため現金を希望する宿もあります
  • ファーマーズマーケットや小さな工芸品店
  • 教会や史跡の寄付箱

目安として、1人あたり50〜100ポンド程度を現金で持っておけば、通常の旅行では十分です。ハイランドや離島を長く回る場合は、もう少し多めに用意しておくとよいでしょう。

ATM(キャッシュポイント)の使い方

イギリスではATMを一般に「キャッシュポイント(cashpoint)」または「cash machine」と呼びます。銀行の支店、スーパーマーケット、駅、街角などに広く設置されています。

銀行が設置しているATMは手数料無料のものがほとんどです。一方、コンビニや小さな店の中にある独立系のATMは手数料を取ることがあり、その場合は画面に「This machine charges £X」と明示されます。表示が出たら、キャンセルして銀行のATMを探す方が得です。

必ず知っておきたい注意点:DCC(自国通貨建て決済)

ATMやカード決済端末で、「日本円で決済しますか、ポンドで決済しますか」と聞かれることがあります。これはDCC(Dynamic Currency Conversion)と呼ばれる仕組みで、必ず「ポンド(GBP)」を選んでください。円建てを選ぶと、その場の業者が独自に設定した不利なレートが適用され、数パーセント余計に支払うことになります。ポンド建てを選べば、カード会社の為替レートが適用され、通常はそちらの方が有利です。

これはATMだけでなく、店舗やレストランのカード端末でも同じです。

両替はどこですればよいか

もっとも簡単で、多くの場合もっとも有利なのは現地のATMでポンドを引き出す方法です。海外事務手数料の低いカードを持っていれば、両替所を使うより有利になることがほとんどです。

現金を両替する場合は、次の点を覚えておいてください。

  • 空港の両替所はレートが悪い — 到着直後に必要な最低限だけにとどめ、残りは市内で
  • 「手数料無料(No commission)」の表示に注意 — 手数料を取らない代わりにレート自体を悪く設定していることがあります。比較すべきは手数料ではなく、最終的に受け取れる金額です
  • エジンバラやグラスゴーの中心部には両替所が複数あり、競争があるぶんレートが比較的良好です

また、日本を出発する前にすべてを両替していく必要はありません。少額を用意し、残りは現地のATMで調達するのが実際的です。

チップの習慣

イギリスのチップ文化はアメリカほど厳格ではなく、義務ではありません。とはいえ、いくつか慣習があります。

  • レストラン — サービス料(service charge)が請求書に含まれていなければ、10%程度が一般的です。含まれている場合は、追加のチップは不要です
  • パブ — カウンターで注文して自分で席に運ぶ形式では、チップは不要です。テーブルサービスがある場合は、少額を置いていく人もいます
  • タクシー — 端数を切り上げて渡すのが一般的です(£18.40 なら £20 など)
  • ホテル — 荷物を運んでもらった場合に £1〜2程度。必須ではありません
  • カフェ — カウンターにチップ用の瓶が置いてあることがありますが、任意です

請求書に「service charge included」「optional service charge」と書かれている場合、その分はすでに加算されています。二重に払わないよう、支払い前に確認してください。

免税手続き(VAT還付)は廃止された

これは多くのガイドブックや旅行サイトの情報が古いままになっている重要な点です。

かつてイギリスでは、外国からの旅行者が買い物にかかった付加価値税(VAT)の還付を空港で受けられる制度がありました。しかしこの制度はイギリス本土(イングランド・スコットランド・ウェールズ)では廃止されています。現在、空港でVATの払い戻しを受けることはできません。

買い物の際は、表示価格がVAT込みの最終価格だと考えてください。免税を前提に予算を組まないよう注意が必要です。

物価と予算の目安

参考として、スコットランドでの一般的な支出感覚を挙げておきます(価格は変動しますので目安としてご覧ください)。

  • パブでのビール1杯 — £5前後
  • カフェのコーヒー — £3〜4
  • カジュアルなレストランの食事 — £15〜25
  • 市内バスの1回乗車 — £2前後

エジンバラは8月のフェスティバル期間中、宿泊費が大幅に上がります。エジンバラ・フェスティバル・フリンジの時期に訪れる場合は、早めの予約と多めの予算を見込んでください。宿泊先の選び方についてはホテルのご案内も参考になります。

よくある質問

スコットランドでユーロは使えますか。

使えません。通貨は英ポンド(GBP)です。ユーロを持参しても、現地で両替する必要があります。

スコットランド紙幣は日本で両替できますか。

日本の金融機関では、スコットランド発行の紙幣の取り扱いを断られることがあります。イングランド銀行券に比べて認知度が低いためです。帰国前に使い切るか、現地の銀行でイングランド銀行券に交換しておくと確実です。

クレジットカードだけで旅行できますか。

都市部であればほぼ可能です。ただしハイランドや島嶼部を訪れる場合、また小規模な宿や無人の直売所を利用する可能性がある場合は、少額の現金を持っておくことを強くおすすめします。

暗証番号(PIN)は必要ですか。

はい。イギリスではICチップと暗証番号による決済(Chip and PIN)が標準です。日本を出発する前に、カードの暗証番号を必ず確認しておいてください。

空港からの移動に現金は必要ですか。

必要ありません。エアリンクバスやトラムはカードやタッチ決済に対応しています。詳しくはエジンバラ空港から市内中心部への行き方をご覧ください。

チップを払わないと失礼にあたりますか。

いいえ。イギリスではチップは義務ではありません。サービスに満足した場合の任意の心付けと考えてください。

まとめ

スコットランドのお金について、最低限押さえておくべき点は次の3つです。

  • 通貨は英ポンド(GBP)。ユーロは使えない
  • カードとタッチ決済が主流。ただしハイランドや離島では少額の現金を用意する
  • ATMや店舗で通貨を聞かれたら必ずポンド建てを選ぶ

この3点を覚えておけば、お金まわりで困ることはほとんどありません。旅の計画についてはスコットランド旅行ガイドのトップページから、各地の見どころをご覧ください。ロイヤルマイル周辺での買い物や、リンリスゴー宮殿のような史跡めぐりの際にも、ここでご紹介した内容がそのまま役立ちます。