ロイヤルマイル

ロイヤルマイルは、エジンバラ旧市街の背骨にあたる石畳の通りです。丘の頂に立つエジンバラ城から、坂を下りきったところにあるホリールード宮殿まで、ほぼ一直線に約1マイル(およそ1.6キロ)続いています。エジンバラで最初に歩くべき場所であり、多くの旅行者にとってスコットランド旅行の出発点となる通りです。

なお日本語では、この街の名前は「エジンバラ」とも「エディンバラ」とも表記されます。どちらも同じ Edinburgh を指し、当ガイドでは「エジンバラ」で統一しています。通りの名前も「ロイヤルマイル」のほか「ロイヤルミレー」と書かれることがありますが、いずれも同じ Royal Mile のことです。

ただし「1マイルの一本道」と聞いて想像するほど単純ではありません。両側には無数の細い路地が枝分かれし、通りの表情は場所によって大きく変わります。このページでは、歩く順序、見どころ、所要時間、そして混雑を避けるこつまでを整理してご紹介します。

ロイヤルマイルとは

「ロイヤルマイル」は正式な住所名ではなく、4つの通りをまとめた通称です。城側から順に、次のように名前が変わります。

  • キャッスルヒル(Castlehill) — 城の門前から始まる最も短い区間
  • ローンマーケット(Lawnmarket) — かつて布地の市が立った区間
  • ハイストリート(High Street) — 大聖堂を含む中心部で、最もにぎやか
  • カノンゲート(Canongate) — 宮殿へと下る、静かで落ち着いた区間

名前の由来は、両端に王城と王宮があること、そして歴代の王がこの道を行き来したことにあります。中世には城壁に囲まれた都市の中心軸であり、人口が密集した結果、上へ上へと積み上がる高層住宅が生まれました。ヨーロッパで最も早く「高層建築の街」になった場所のひとつです。

どちらから歩くべきか

エジンバラ城から下る方向を強くおすすめします。

理由は単純で、こちらが下り坂だからです。城側は丘の頂上にあり、宮殿側との高低差はかなりのものがあります。宮殿から登ると、石畳の急坂を延々と上ることになり、着く頃には城を見る体力が残っていません。

城は開場直後がもっとも空いています。朝いちばんに城を見学し、そのまま坂を下りながら通りを歩き、午後にホリールード宮殿かスコットランド議会を見る。これが最も無理のない一日の組み立て方です。

通り沿いの主な見どころ

城側から順に並べています。すべてに入る必要はありません。2つか3つを選び、残りは外観を眺めながら歩く方が、この通りの雰囲気を楽しめます。

スコッチウイスキー・エクスペリエンス

城のすぐ下にある、スコッチウイスキーの入門施設です。製造工程を体験形式で学び、試飲までできます。ウイスキーに詳しくない方でも楽しめる構成になっており、蒸溜所を訪ねる時間が取れない旅程では特に価値があります。

カメラ・オブスクラと幻想の世界

19世紀から続く光学装置「カメラ・オブスクラ」を中心とした施設です。屋上の展望台からはエジンバラの街並みを一望できます。錯視や体験型の展示が多く、お子さま連れに人気があります。

グラッドストンズ・ランド

17世紀の集合住宅を復元した建物で、当時の暮らしぶりがそのまま残されています。派手さはありませんが、旧市街がどのように積み上がっていったのかを実感できる、静かで質の高い見どころです。

セント・ジャイルズ大聖堂

ロイヤルマイルのほぼ中央に建つ、王冠の形をした尖塔が目印の教会です。スコットランド宗教改革の中心人物ジョン・ノックスゆかりの場所であり、内部のシスル礼拝堂は精緻な木彫りで知られています。入場は基本的に寄付制です。

リアル・メアリー・キングス・クローズ

通りの地下に埋もれた小路をガイドとともに巡るツアーです。17世紀の疫病流行時の話を含め、旧市街の地下がどうなっているのかを知ることができます。人気が高く、当日券が取れないことも多いため、事前予約をおすすめします。

ジョン・ノックス・ハウス

ハイストリート沿いに突き出すように建つ、通りで最も古い部類の建物です。建物そのものが見どころで、外観を眺めるだけでも中世の街並みの名残が伝わります。

スコットランド議会とホリールード宮殿

坂を下りきると、右手に現代建築のスコットランド議会、正面にホリールード宮殿があります。宮殿は現在も国王のスコットランドにおける公式住居で、メアリー・スチュアートの居室が残されています。国王滞在中は閉館するため、訪問前に開館状況の確認が必要です。

本当の魅力は「クローズ」にある

ロイヤルマイルを歩く上で、ぜひ知っておいていただきたいことがあります。本通りだけを歩いて終わるのは、もったいないということです。

通りの両側には、「クローズ(close)」や「ウィンド(wynd)」と呼ばれる細い路地が数十本も枝分かれしています。人ひとりがやっと通れるほどの幅で、石段が続き、奥に中庭が隠れていることもあります。名前はかつてそこに住んでいた人物や商売にちなむものが多く、入口の上に古い文字で記されています。

観光客の流れは本通りに集中するため、路地に一歩入るだけで驚くほど静かになります。数本入ってみるだけで、この街の印象は大きく変わります。危険な場所ではありませんので、気になった路地は遠慮なく覗いてみてください。

所要時間の目安

純粋に端から端まで歩くだけなら、20分から30分です。ただしそれは、何も見ずに通り抜けた場合の話です。

  • 通りを歩き、写真を撮り、路地を少し覗く — 1時間30分ほど
  • 上記に見どころを2か所加える — 半日
  • 城と宮殿の両方に入り、途中の施設も見る — 丸一日

初めてエジンバラを訪れるなら、丸一日を充てる価値があります。急いで通り抜けるより、途中で腰を下ろしてお茶を飲む時間を取った方が、この通りらしさを味わえます。

訪れる時間帯と季節

朝がおすすめです。午前9時前の通りは驚くほど静かで、石畳と建物の様子をゆっくり眺められます。団体客が増えるのは10時以降です。

夕方も雰囲気があります。特に冬は日没が早く、街灯に照らされた石畳が独特の表情を見せます。

8月は事情が大きく変わります。エジンバラ・フェスティバル・フリンジの期間中、ロイヤルマイルは大道芸人と宣伝ビラを配る出演者で埋め尽くされ、歩くのも困難なほど混雑します。お祭りの熱気を味わいたい方には最高ですが、静かに街並みを見たい方には向きません。この時期は宿泊費も大幅に上がりますので、旅程を組む際にご注意ください。

買い物と食事

ロイヤルマイル沿いには土産物店が非常に多く並んでいます。品質には大きな差があります。安価なタータン柄の土産物の多くは輸入品です。本物のカシミヤやタータンを求める場合は、店構えのしっかりした専門店を選んでください。

ウイスキーの品揃えが充実した専門店もあり、こうした店では試飲や相談に応じてもらえることがあります。

食事については、通りに面した店は観光客向けで割高な傾向があります。一本裏の通りや路地に入ると、地元の人が使う店が見つかります。支払い方法や現金の必要性については、スコットランドの通貨とお金のガイドをご覧ください。

歩く前に知っておきたいこと

  • 靴は歩きやすいものを — 全面が石畳で、表面は不揃いです。かかとの細い靴は避けてください
  • 坂の勾配は見た目より急です — 特に城に近い区間は傾斜があります
  • 天候は変わりやすい — 通りは風の通り道になっており、防水の上着があると安心です
  • 大道芸人への心付け — 立ち止まって最後まで見た場合は、少額を渡すのが礼儀です
  • 客引きに注意 — 特に夏場、ツアーの勧誘が多くなります。無理に応じる必要はありません

行き方

ロイヤルマイルは旧市街の中心にあり、市内のほとんどの場所から徒歩で行けます。エジンバラ・ウェイバリー駅からは徒歩5分ほど、坂を上るだけです。

空港から直接向かう場合は、エジンバラ空港から市内中心部への行き方をご覧ください。トラムまたはエアリンクバスで市内中心部まで出れば、そこから徒歩圏内です。

車での訪問はおすすめしません。旧市街は一方通行と歩行者専用区間が入り組んでおり、駐車場も限られ、料金も高額です。公共交通機関か徒歩でお越しください。

宿泊先についてはホテルのご案内をご覧ください。旧市街に泊まれば、朝いちばんの静かなロイヤルマイルを歩くことができます。

よくある質問

ロイヤルマイルを歩くのに料金はかかりますか。

通りを歩くこと自体は無料です。料金がかかるのは、城や宮殿、各施設に入場する場合のみです。

どのくらいの時間を見ておけばよいですか。

歩くだけなら30分程度ですが、見どころに立ち寄るなら半日から一日を見込んでください。

坂はきついですか。

城から宮殿へ下る方向であれば、負担は大きくありません。逆方向は上り坂が続きます。歩行に不安がある場合は、城側から下る順路をお選びください。

雨の日でも楽しめますか。

はい。屋内の見どころが多いため、天候が悪い日にも向いています。石畳は濡れると滑りやすくなりますので、足元にはご注意ください。

子ども連れでも大丈夫ですか。

問題ありません。カメラ・オブスクラやエジンバラ・ダンジョンなど、お子さまが楽しめる施設もあります。ただし石畳はベビーカーには不向きですので、抱っこひもの方が動きやすいでしょう。

いつが最も空いていますか。

早朝、そして8月以外の平日です。フェスティバル期間中の8月は一年で最も混雑します。